文字起こしからのテーマティック・アナリシス:6つのフェーズ
テーマティック・アナリシス質的研究コーディング

文字起こしからのテーマティック・アナリシス:6つのフェーズ

BMMamane B. MoussaMay 26, 2026Updated July 2, 20262 min read

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TL;DR

ブラウンとクラークによる6フェーズのリフレクシブ・テーマティック・アナリシスは、インタビューの文字起こしからテーマを導き出すための最も引用されている質的方法であり、2006年の論文はGoogle Scholarで約30万回引用されています。データとの慣れ親しみ(ファミリアライゼーション)は、文字起こしの後ではなく、文字起こしの作業そのものの中で始まります。ワークフローは、コーディング、テーマ生成、2段階の見直し、定義化を経て執筆に至りますが、本当の作業量が集中するのは第1〜第3フェーズです。博士論文規模の研究では3〜6個程度のテーマが生まれるのが一般的で、3個未満ならテーマが抽象的すぎること、6個を超えるなら記述的すぎることが多いです。

明確な手順に従えば、テーマティック・アナリシスはインタビューの文字起こしから、説得力のある構造化されたテーマを生み出せます。2006年にQualitative Research in Psychology誌で初めて発表され、2022年の著書Thematic Analysis: A Practical Guideで体系化された、ブラウンとクラークの6フェーズのリフレクシブな枠組みが、その手順を与えてくれます。6つのフェーズは順番に片付けていくチェックリストではありません。反復的なものであり、フェーズ間を行ったり来たりすることになります。それでも、この枠組みは指導教員や査読者に説明できる「分析のかたち」を与えてくれるのです。

6つのフェーズの概要

この枠組みは次のように示されます:

  1. データとの慣れ親しみ(ファミリアライゼーション)
  2. 初期コードの生成
  3. 初期テーマの生成
  4. テーマの見直しと発展
  5. テーマの洗練、定義、命名
  6. レポートの作成

多くの大学院生が陥りがちな罠は、第1〜第5フェーズを手早く済ませる準備とみなし、すべての労力を第6フェーズに注ぎ込むことです。分析が薄ければ執筆は遅々として進みません。逆に分析が徹底していれば、執筆はほぼひとりでに進んでいくものです。

フェーズ1:ファミリアライゼーション(文字起こしの最中に始まる)

ファミリアライゼーションは、文字起こしファイルを開いたときではなく、音声に触れた瞬間から始まります。 ブラウンとクラークは、可能であれば手動での文字起こしがデータへの深い没入をもたらすと指摘しています。文字起こしの前または最中に録音を能動的に聴くことで、整えられたテキストでは失われるトーンの手がかり、ためらい、強調点を把握できます。

文字起こしが揃ったら、真のファミリアライゼーションの最低ラインは、各文字起こしをメモを取りながら2回通読することです。流し読みではなく、読むことです。

60分のインタビュー1本は、通常9,000〜12,000語の文字起こしになります。20本のインタビューを含むプロジェクトでは、約20万語を2回読むことになります。このフェーズだけで25〜40時間を見積もっておきましょう。

ここで重要になるのは、元データの精度です。文字起こしに誤りが頻繁にあると、欠陥のある土台の上にデータのメンタルモデルを築くことになります。ファミリアライゼーションを始める前に、各文字起こしを音声と照合して確認してください。質的研究のための文字起こしガイドでは、その確認プロセスを詳しく解説しています。

ファミリアライゼーションを始める前に文字起こしを素早く仕上げたい場合は、ConvertAudioToTextが完全な文字起こしに加えてAI生成の要約(英語音声対応)を作成し、精読に入る前に各インタビューの構造化された5分間の第一印象を得られます。要約はファミリアライゼーションの代わりにはなりません。あくまで便利なオリエンテーション層です。

初回パスのAI要約はファミリアライゼーションの補助であり、決して読み込みの代替ではない
初回パスのAI要約はファミリアライゼーションの補助であり、決して読み込みの代替ではない

フェーズ2:初期コードの生成

コーディングは、多くの研究者が分析時間の大半を費やす工程です。コードとは、データの断片に付ける短いラベルで、その断片が何についてのものかを捉えます。

リフレクシブ・テーマティック・アナリシスは主に帰納的です。コードは既存の枠組みからではなく、データから浮かび上がってきます。ブラウンとクラークはコードを「暫定的な解釈」と表現しており、客観的な意味の固定された抽出物とは位置づけていません。研究者であるあなたの視点は、何に気づくかを能動的に形づくります。それは手法の欠陥ではなく、リフレクシブTAの特徴です。リフレクシブTAは研究者の主観性を、排除すべきバイアスの源ではなく、分析的リソースとして扱います。

研究課題が求めるのであれば演繹的な要素を取り入れることも可能ですが、強く演繹的な研究であれば、リフレクシブTAよりもフレームワーク分析やテンプレート分析の方が適しているかもしれません。

インタビュー20本という典型的なプロジェクトでは、データセット全体で80〜200個の初期コードを見込んでください。 幅が広いのは、トピックの範囲やコーディングの粒度に依存するためです。

コーディング用ツール

テキストにラベルを付けられるツールであれば、どれでもコーディングに使えます:

ツール向いている用途備考
NVivo(Lumivero)大規模データセット、階層構造サブスクリプションと永久ライセンスあり;AI支援コーディングはアドオンで利用可
MAXQDA混合研究法;学術価格学術ライセンスは年額約250ドルから
ATLAS.ti視覚的なマッピング;クラウド版学生向けクラウドプランは月額約5ドルから
コメント機能付きWord小規模データセット(インタビュー5件未満)無料;それ以上の規模では扱いにくい
スプレッドシート(1行に1つのコード適用)監査証跡を重視するアプローチ手間はかかるが透明性が高い

1つのツールを選び、プロジェクト全体を通じて使い続けましょう。分析途中での乗り換えは、再インポートと再整理に数週間を浪費することになりかねません。

専用QDAソフトウェアとAI支援アプローチの詳細な比較については、NVivo対AI文字起こしの比較でトレードオフを解説しています。

フェーズ3:初期テーマの生成

初期コードが揃ったら、それらを候補テーマへとクラスタリングします。ここが概念的な重労働です。

テーマはトピックではありません。テーマとは、研究課題にとって分析的に意味のある何かを捉える、データ全体にまたがるパターンです。 コードは一つの箇所にある具体的な事柄に名前を付けます。一方テーマは、その事柄と関連する事柄が、複数の参加者、複数のインタビューにまたがって何を語っているかに名前を付けます。

この段階での規律は、候補テーマを書き出したうえで、各テーマの下に属するコードを見直し、本当に一緒に属していてよいかを問うことです。クラスタ内のいくつかのコードが実際には別の事柄についてのものであれば、そのテーマは分割が必要です。

公刊済みの研究で確認されたパターンによれば、博士論文規模のリフレクシブTA研究の多くは、この段階で3〜6個の初期テーマを生み出します。3個未満ならテーマが抽象的すぎることが多く、6個超ならまだコードレベルであってテーマレベルに達していないことが多いです。

フェーズ4:テーマの見直しと発展

ここが最初の妥当性チェックです。候補テーマを取り上げ、2つのレベルのエビデンスに対して検証します。

レベル1:内部の一貫性。 1つのテーマの下にコーディングされたデータ抜粋をすべて読みます。それらは一貫したストーリーを語っていますか?まとまりが感じられなければ、そのテーマは2つのテーマ、あるいは1つのテーマとサブテーマに分かれているかもしれません。

レベル2:データセット全体との適合性。 コード化した抜粋だけでなく、元の文字起こしに立ち返ります。現在のテーマで説明しきれていないデータの重要な部分はありませんか?そのギャップこそがシグナルです。

このフェーズでは、テーマは分割され、統合され、改名され、削除されます。ここには2日ではなく、丸1〜2週間を見込んで計画しましょう。

フェーズ5:テーマの洗練、定義、命名

フェーズ5までに、テーマは安定しているはずです。ここで各テーマについて簡潔な定義を書きます。テーマ定義には以下を含めます:

  • 明確な名称(4〜8語)
  • テーマが何を捉えているかを示す2〜3文の説明
  • 代表的な引用3〜5件
  • 他のテーマとの関連に関するメモ

この文書が、執筆の分析的な背骨となります。公刊された質的研究論文では、この内容が方法セクションや結果セクションの冒頭に要約されているのをよく目にします。

テーマ名は単にトピックのラベルを貼るのではなく、分析的な仕事をするものであるべきです。「参加者は資金面の課題について議論した」はコードの説明であって、テーマ名ではありません。テーマ名であれば、どんな種類の課題なのか、なぜそれが重要なのか、そこから何が読み取れるのかを枠づけます。

フェーズ6:レポートの作成

第1〜第5フェーズを徹底的に行っていれば、典型的な博士論文の章やジャーナル論文の執筆には2〜4週間かかります。結果セクションは通常、あなたのテーマに沿って構成され、各テーマはデータ全体から選んだ最も強力な2〜3件の引用で支えられます。

強い質的研究の文章と弱いものを分ける要素は2つあります。

1つ目は引用の選択です。鮮明で具体的な引用を選びましょう。どんなプロジェクトからでも出てきそうな汎用的な引用は、参加者の経験に明確に結びついた具体的な引用ほど働きません。

2つ目は分析的な一手です。記述は、参加者が何を語ったかを読者に伝えます。分析は、それが研究課題と既存の文献に照らして何を意味するのかを読者に伝えます。すべてのテーマを「これは、私たちがすでに知っていることを超えて何を教えてくれるのか?」という問いに通してみましょう。

AIが活きる場面と活きない場面

AIツールはテーマティック・アナリシスの一部を加速できます。しかし、分析的な判断を代替することはできません。

AIが役立つ場面: 文字起こし、各インタビューの初回パスのオリエンテーション要約の生成、その後に評価・修正できる候補コードラベルの提示、インタビュー間の類似箇所の特定。

AIが役立たない場面: コードが組み合わさって何を意味するのか、テーマがデータについて何を捉えているのか、そして知見が文献とどう関係するのかという判断です。2022年のブラウンとクラークの著書は、リフレクシブTAには研究者の関与した主観性が全過程を通じて必要だと明言しています。これは現時点のAIの限界ではなく、手法そのものの特徴です。

AI対人間の文字起こし比較では精度のトレードオフを、質的インタビューのコーディングガイドではAI支援コーディングをより深く解説しています。

私の見解:AI文字起こしはプロセスの前段階で確実に時間を節約してくれますし、AI要約も便利なオリエンテーション層です。しかし、AIにテーマの生成や分析の執筆をさせようとした瞬間、あなたはリフレクシブTAを放棄して別の何かをしていることになります。その道を選ぶなら、方法セクションでそれを明確に記述してください。査読者は必ず尋ねてきます。

インタビュー20本のプロジェクトに要する時間

インタビュー20本のテーマティック・アナリシスについて、妥当性を説明できる時間配分は以下の通りです:

  • 文字起こしの確認(AI生成後):15〜30時間
  • ファミリアライゼーション(2回の通読):25〜40時間
  • 初期コーディング:60〜100時間
  • テーマ生成と見直し:30〜50時間
  • テーマ定義:10〜20時間
  • 執筆:60〜100時間

合計:200〜340時間。 週20時間ペースなら、集中した作業で10〜17週間かかります。博士論文の章や充実したジャーナル論文としては現実的な数字です。4週間で質高く仕上げるのは現実的ではありません。

査読で却下につながりやすい3つのパターン

実態はコードであるテーマ。「参加者は資金面の課題について議論した」はコードレベルの記述です。テーマであれば、根底にあるパターンに名前を付けます。どんな種類の課題なのか、どんな文脈で起きているのか、どんな意義を持つのか。

都合よく選ばれた引用。 強いテーマには、データセット全体から複数の参加者の声が支えとして集まっています。20人中2人の参加者の引用だけに依拠するテーマは、外れ値の観察であってテーマではありません。

分析なき記述。 結果セクションが参加者の発言の要約にとどまり、読者に「だから何?」と思わせてしまう状態です。すべてのテーマを、データの言い換えを超えて何を語るのかという問いに通しましょう。その一手こそが分析です。

厳密な質的研究用の文字起こし土台の構築については、文字起こし精度ガイド話者ダイアリゼーション解説ガイドで、分析開始前にクリーンで話者属性付きの文字起こしを得るための技術面を解説しています。

よくある質問

ブラウンとクラークの2006年のオリジナルなテーマティック・アナリシスと、リフレクシブTAアプローチの違いは何ですか?

6つのフェーズ自体は変わりません。大きく変わったのは、2019年と2022年の著作における哲学的な枠組みです。リフレクシブTAでは、テーマはデータの中に発見される実体ではなく、研究者が構成するパターンとして捉えられます。研究者の主観性は、括弧に入れて排除すべきバイアスの源ではなく、分析的なリソースとして扱われます。評価者間信頼性(IRR)に基づくコーディングは、同じデータから2人の分析者が正当にも異なるコードを生み出しうるという前提に立つため、リフレクシブTAとは明確に相容れません。所属機関や指導教員がIRRを求める場合は、それがTAの別の系譜なのか、まったく別の手法を指しているのかを確認しましょう。

テーマティック・アナリシスでは、テーマはいくつ生成すべきですか?

博士論文レベルで発表されたリフレクシブTA研究の多くは、3〜6個の主要テーマを生成し、それぞれに2〜4個のサブテーマを持たせています。3個未満の場合、テーマが広すぎて分析的な重みを担えない可能性があります。6個を超える場合は、まだテーマレベルではなくコードレベルの粒度にとどまっていることが多いです。正しい数は、あなたの特定のデータセット内のパターンを正確に表せる数です。

AIツールを使って質的データの文字起こしをコーディングできますか?

AIツールは候補となるコードラベルの生成や、複数の文字起こしにまたがる類似箇所の抽出を行えます。ただしその出力は、研究者自身のコーディングの出発点として有用なだけで、代わりにはなりません。リフレクシブTAは、コーディングプロセス全体を通じて研究者自身の関与した判断を特に求めます。AIが生成したコードを使う場合でも、それぞれを分析的に評価し、修正し、自分のものとして引き受ける必要があります。方法セクションでは、AIツールをどのように使用したかを明記してください。

テーマティック・アナリシスにはNVivoやATLAS.tiのような専用ソフトウェアが必要ですか?

いいえ。テーマティック・アナリシスは、変更履歴とコメント機能付きのWordでも、1行に1つのコード適用を記録するスプレッドシートでも、印刷した文字起こしに蛍光ペンで印をつける形でも行えます。専用のQDAソフトウェア(NVivo、MAXQDA、ATLAS.ti)は大規模プロジェクトを高速化し、コード階層や検索を容易にしますが、分析的な作業はどのツールを使っても自分自身のものです。インタビュー5件未満のプロジェクトなら、Wordが最もシンプルな選択肢であることが多いです。

テーマティック・アナリシスを始める前に、文字起こしの誤りにはどう対処すればよいですか?

ファミリアライゼーションを始める前に、各文字起こしを元の音声と照合して確認します。固有名詞、専門用語、話者がためらった箇所、他の話者と重なった箇所、小さな声で話した箇所には特に注意を払いましょう。文字起こしに残った誤りは、コードの誤りとなり、最終的にはテーマの誤りにつながります。AI文字起こしの精度は音声品質やアクセントによって異なるため、AIの文字起こしは常にレビューが必要な初稿として扱い、完成文書としては扱わないでください。

参考文献

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